1.適用される法律
(1)国際私法「法の適用に関する通則法」による準拠法の決定
・「相続は、被相続人の本国法による」(通則法36条)
・「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による」
(通則法41条 反致)
・韓国は反致を認めていないが、遺言で反致を指定することができる。
(2)先決問題
・韓国の家族関係登録簿には婚姻の記載がないが、日本の役場に婚姻届を提出している場合(通則法24条2項)
・韓国の家族関係登録簿には子の記載がないが、日本の役場には出生届を提出している場合(通則法28、29、34条)
2.韓国相続法の要点
(1)相続人
①第1順位 直系卑属
②第2順位 直系尊属
③第3順位 兄弟姉妹
④第4順位 4親等以内の傍系血族
⑤配偶者 第1順位の直系卑属または第2順位の直系尊属と同順位
直系卑属と直系尊属がいなければ兄弟姉妹がいても配偶者の単独相続
(2)代襲相続
・相続開始前に死亡又は欠格していた者の直系卑属は代襲相続人となる
・被相続人の直系卑属の配偶者も代襲相続人となる(被相続人の子の配偶者など)
(3)遺産分割・放棄等
・遺産分割、特別受益、相続分の譲渡及び遺留分の放棄は認められていない
・相続の限定承認・放棄は家庭法院への申告が必要(日本の家庭裁判所での申し述べも可能)
3.在日の相続証明書類
①韓国の家族関係登録簿・除籍簿及び相続人の基本証明書
②外国人登録原票の写し
③住民票(平成24年7月9日外国人登録法は廃止され、外国人住民票が導入された)
④帰化している場合や日本人と婚姻している場合の日本の戸籍・除籍謄本
⑤日本における出生届、死亡届、婚姻届、離婚届、養子縁組届
⑥遺産分割協議書等
*②は委任による請求もできない
1.外国在住者に遺産分割協議書を送る場合、相続人に領事館へ出向いてもらい、領事の面前で署名してもらい、署名証明書を奥書してもらうなど必要。
2.平成24年以降日本在住の外国人にも住民票が作成されたが、前住所が記載されておらず、閉鎖された外国人登録原票の写しをとりよせるなど。
法務省へ郵送請求するが、代理人による請求はできない。
3.外国在住の日本人が登記義務者の場合、登記原因証明情報や委任状への署名及び領事館での署名証明書奥書に時間がかかる。
4.外国人を被相続人とする相続登記では、適用法令の確認(本国か日本国民法か)
また、在日韓国・朝鮮人の相続には韓国・朝鮮の戸籍を取り寄せ、翻訳も必要となる。
5.外国人や外国会社が出資して会社設立あるいは、外国人が役員に就任する場合、外国為替および外国貿易法、出入国管理法も調べる必要がある。
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