法人登記手続

各法人類型の比較

  根拠法 代表者 理事会等 理事の任期

資産の

総額

株式会社 会社法 代表取締役

法定機関

(任意)

2年以内
一般社団法人 一般社団・財団法人法 代表理事

法定機関

(任意)

2年以内
特例民法法人

一般社団・財団法人法

及び同法整備法

理事 非法定 定款の定め
医療法人 医療法 理事長 法定機関 上限2年
学校法人 私立学校法 理事長 法定機関

寄付行為の

定め

社会福祉法人 社会福祉法 理事長 法定機関 2年以内
宗教法人 宗教法人法 代表役員 非法定 規則の定め
NPO法人 特例非営利活動促進法 理事 非法定

2年以内

(伸長可)

中小企業等協同組合 中小企業等協同組合法 代表理事 法定機関

 2年以内

(伸長可)

 △

*中小企業等協同組合は、「払込済出資総額」を登記する

役員の変更

(1)役員の選任方法

・根拠法又は定款の定めに従う

(2)選任を証する書面

・社員総会、理事会等の法定機関又は定款の定める機関による選任を証する書面

(3)印鑑証明書の添付の要否

・社員総会、理事会又は評議員会による理事の選任には議事録印の印鑑証明書を要する

・理事長による理事の任命の場合には印鑑証明書不要

理事は任期満了しても、後任者が就職するまでその職務を行わなければいけない

*上記を任期伸長規定と解することができるのは、【法定任期が存しない場合】又は【定款で定める任期が法定任期を下回る場合】に限られる。

理事の「予選」について

①確定任期である法人(医療法人)では「予選」が必要

②改選後も理事の構成員に異動がない場合、理事長等も「予選」可能

③改選後に理事の構成に移動がある場合、理事の就任日以降に理事長等を選任

登録免許税

①法人登記

・一般社団法人及び一般財団法人は課税される

②不動産登記

・原則課税

 

 

一般社団法人及び一般財団法人

(1)営利法人と非営利法人

①営利法人

・株主に「剰余金の配分を受ける権利」及び「残余財産の分配を受ける権利」の全部を与えない定款の定めは無効

②非営利法人

・社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは無効

 

(2)社団法人or財団法人

・財団法人は設立者の意思の尊重のため、目的の変更に制約がある

・財団法人は解散事由が特殊である

 

(3)営利を目的としない法人

・社員又は設立者に剰余金及び残余財産の分配ができない

 

(4)税制上優遇措置

・一般社団法人及び一般財団法人でも以下のいずれかの条件を満たした場合税制上の優遇を受けられる(収益事業にのみ課税)

①非営利性の徹底された法人

・剰余金を分配しない

・解散時に残余財産は公益的な団体に帰属

・理事及び親族等が理事数の3分の1以上を占めていない等

②共益的活動を目的とする法人

・公益目的の存在

・会員の負担金の定め

・主たる事業に収益事業がない

・剰余金の分配をしない

・解散時に残余財産は公益的な団体に帰属等

 

(5)公益法人等への寄付に対するみなし譲渡所得税の免除(租税特別措置法40条)

・一定の要件を満たす公益法人等へ個人が寄付等を行った場合にみなし譲渡所得税を免除する規定がある

租税特別措置法40条の承認申請

 

(6)一般財団法人の設立の際の財産の拠出

・300万円以上必要

・「公証人の認証後遅滞なく」出資しなければいけない

*株式会社では「設立時発行株式の引受後遅滞なく」、合同会社では「定款の作成後」に出資する。

 

(7)代表理事が交代する場合の理事会議事録の押印

・出席した理事及び監事全員の印鑑証明書が原則必要

・定款で議事録押印は代表理事のみと定めたときには、代表理事及び監事のみが記名押印すれば足りる

 

 

医療法人

1.機関

(1)社団たる医療法人は、社員総会、理事、理事会及び監事

(2)財団たる医療法人は、評議員、評議員会、理事、理事会及び監事

 

2.役員の選任及び任期

(1)役員の選任

①医療法人には、理事3人以上及び監事1人以上を置く。ただし理事については当道府県知事の認可があれば1人又は2人の理事で足りる。

②社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議により選任する

③財団たる医療法人の役員は評議員会の決議により専任する

④理事会が理事長を選出する

 

(2)役員の任期等

①役員の任期は2年を超えることができない

②任期満了又は辞任により退任した役員も、法又は定款若しくは寄付行為に定める役員数を欠くときは、後任が就任するまで権利義務役員となる

③理事又は監事の定数の5分の1を超えるものが欠けたときは、1ヶ月以内に補充必要

 

3.社団医療法人の登記実務等

・登記事項は「理事長」のみ

・定款の変更は都道府県知事の認可必要

・社員総会議事録には法律上押印不要(定款の定めによる)

・社員総会は書面決議はできないが、理事会決議は書面決議が可能(定款の定めあれば)

・理事会議事録には出席理事及び監事全員の署名押印が必要だが、定款の定めがあれば、代表理事及び監事のみの署名押印のみで足りる

・理事は、定時社員総会で事業内容を報告し、貸借対照表及び損益計算書の承認を受けなければいけない

 

4.その他

(1)不動産登記

・利益相反取引における理事会の承認に関して、理事が登記事項ではないため、出席した理事及び監事の証明が問題となるが、選任した時の社員総会議事録等を添付し、退任した理事等がいる場合、理事長名で「当法人に現に在任している理事及び監事は次のとおりである」旨の証明書を付けるなどする。

 

(2)理事の変更登記と改正医療法の経過措置

・改正医療法により理事の任期は2年と定められたが、施行日において、「任期伸長規定」の適用を受けていた理事は、後任者が就任するまで半永久的に任期が伸長されるとういう不可思議な実務上の扱いとなっている。

 

 

学校法人

1.理事の任期

・法律上の定めがなく、寄付行為によって定めるのが一般的

2.選任方法

・法律上定めなし

3.登記

・理事長その他「代表権を有する理事」を登記する(改正前は全ての理事が登記されていた)

・理事長以外に代表権を持つ理事についてはその代表権の範囲を登記する(ex.大学の業務を代表する)

 

 

社会福祉法人

1.機関

・評議員、評議員会、理事、理事会及び監事を置く

・定款の定めにより会計監査人を置くことができる

2.評議員

・評議員は定款の定めにより、必要な識見を有数者の中から選ぶ

・評議員の数は理事の数を超えなければいけない(最低7人)

・任期は4年以内に終了する最終の定時評議員会の終結時までとする(定款により6年まで伸長可)

3.役員

・理事は6人以上、監事は2人以上を評議員会で選任する

・理事の任期は2年以内に終了する最終の定時評議員会の終結まで

・会計監査人の任期は1年以内に終了する最終の定時評議員会の終結まで

 

 

宗教法人

1.法人登記

(1)役員

・3人以上の責任役員を置き、規則により又は互選で代表役員を1人選任する

・任期は規則の定めによる(法律上定めなし)

・代表役員のみ登記

(2)変更登記

・規則で定めた事項に変更があった時には、「規則の変更の認証書」の交付を受けてから登記する

・登録免許税は不課税

・代表役員の変更登記には、規則、選任決議書、就任承諾書、印鑑証明書、印鑑届出書等を添付する

・登記完了後、登記事項証明書を添えて、所轄官庁へ届け出する

 

2.不動産登記

(1)「寄付」による所有権移転登記

・宗教法人の宗教の用に供する不動産のために土地等を取得し、所轄庁から非課税証明を受けた場合、非課税となる

(2)主たる事務所の移転登記

・移転後の所在地で目的に沿った活動が行われているかなど、所轄官庁による調査後、認証を受ける必要がある

(3)不動産の処分の登記

・境内建物、境内地の売却には、規則で定める公告方法による公告が必要

(4)礼拝用建物及び敷地の登記

・礼拝用の建物又は敷地である旨の登記をすることができ、その登記は、私法上の金銭債権による差押ができなくなる

(5)権利承継の登記

・宗教法人法施行(昭和26年4月3日)以前から所有していた不動産については、権利承継の登記が必要

  登記原因は「宗教法人法附則第18条の権利承継」

 

 

特定非営利活動法人

(1)設立

・所轄庁による「認証」を受ける

・定款の変更には「認証」が必要(ただし、所轄庁の変更のない主たる事務所の所在地、公告の方法、資産に関する事項の定めの変更には認証不要)

(2)役員

・代表権を有する理事全員を「理事」として登記する

・選任方法は定款で定める(法律上定めなし)

(3)理事の任期

・2年以内において定款の定める期間

・ただし定款の定めにより、任期終了後最初の総会が集結するまで伸長可能

(4)残余財産の帰属の登記

・所轄庁への清算結了の届出の時に、定款で定める帰属先に帰属する

・清算結了の届出→所有権移転→清算結了登記→清算結了の登記の届出