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民法改正(債権関係)

施行期日は2020年4月1日

総則

1、意思能力(3条の2)
「法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」

 

2、錯誤(95条)
「意思表示は,次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。」

〈解説〉
まず、「無効」から「取消」になり、判例法理を取り入れた形になった。
軽微な錯誤は、取消を主張できなくなった。

無効が取消になったことにより、その行使期間が追認できるときから5年間、行為の時から20年間にかぎられることとなった。
「表示の錯誤」と「動機の錯誤」と区別したうえで、「動機の錯誤」とは「表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤」とし、その取消しは、当該錯誤が契約の目的及び取引上の社会通念に照らして「重要であること」、事情についての認識が真実に反すること、その事情が法律行為の「基礎」(=要素?)とされていることが「表示」されていた時に限りすることができるとした。

 

「3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き,第1項の規定による意思表示の取消をすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第1項の規定による意思表示の取消は、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。」

〈解説〉

相手方は、抗弁として表意者の重過失を主張。表意者は再抗弁として相手方の悪意又は重過失を主張。
心裡留保や詐欺などと同様、第三者保護規定が置かれ、あるいは改正された。判例を明文化した。

 

代理

第13条1項10号
「前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。」

〈解説〉
これまで、制限行為能力者でも有効に代理行為を行うことができたが、本人が制限行為能力者の場合、保護にかける部分があったので新設。

 

第101条
「代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、代理人について決するものとする。
2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことに過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても同様とする。」

〈解説〉

第1項 代理人が相手方にした意思表示の場合、①意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫、②ある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことに過失があったことにより影響を受ける場合。
第2項 相手方が代理人にした意思表示の場合、②ある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことに過失があったことにより影響を受ける場合。
→ 2項の場合は、①が入らないことに注意
→ 従来の判例は、代理人が詐欺を働いた場合も101条を適用していたが、96条1項を適用すれば足りるとして批判があった。すなわち、代理人が行った詐欺行為により相手方が何らかの意思表示を代理人に対しした場合は、96条1項が適用されることになる。
第3項 「本人の指図」がなくても適用されるようになった

 

第102条
「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りではない。」
〈解説〉

13条の規定と合わせて大きく変わった。

 

旧105条 削除

〈解説〉
復代理人を選任したときに代理人の責任が軽減されるのはおかしいとの批判があった。→ 債務不履行一般原則に従う。

 

第107条(新設)
「代理人が自己又は第三者の利益を計る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。」

〈解説〉
これまで判例は93条(心裡留保)の類推適用としていたが、意思表示自体には何ら問題はないのだから、心裡留保と類似する状況とはいえないと批判があったので本条を新設することになった。
→ 無権代理とされたことで、第113条(追認)、第114条(催告)、第117条(責任追及)が適用されることに。ちなみに、現行法では心裡留保により無効となるので、本人が追認することはできないと考えられているが、改正により追認が可能となる。

 

第117条
「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。」
〈解説〉

第2項第2号
無権代理人は、相手方の過失を立証すれば、責任は免れるが、相手方が無権代理人の悪意を立証すれば、無権代理人は再び責任を問われることになり、従来の判例より、無権代理人の責任が拡大された(無権代理人が悪意の場合と有過失の場合で区別されることに)。

 

第121条・121条の2
「無効な法律行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項に規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第1項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。」
〈解説〉

原則として、原状回復。
有償契約の場合は、現物返還または価格賠償
無償契約の場合は現存利益の返還
意思無能力者、制限行為能力者の場合も現存利益の返還

 

消費貸借

第587条の2(新設)
「前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約することによって、その効力を生ずる。
2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。

この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前3項の規定を適用する。」

〈解説〉

従来から、判例も諾成的消費貸借契約を認めていた。原則を要物契約としながらも、諾成契約も併存させる。
諾成契約の場合、契約のときに①貸す債務と、②返済する債務が発生する。物の不交付は単なる抗弁事由にすぎない。
ヤミ金などの利用を防ぐため、書面要件を付した。
→金銭を交付せずに返済を迫る可能性も。
契約成立後、金銭交付前に貸主が破産した場合、借主の返済債務だけが残る。

→ 第3項が定められた(消費貸借の予約と同じ)。

第588条  〈解説〉利息について(原則無利息、特約が必要、初日算入など)明文化
第590条  〈解説〉旧590条の担保責任は559条の売主の追完請求権が準用されるので削除された。
第591条  〈解説〉136条2項(期限の利益の放棄)と同じ

 

使用貸借

第593条
「使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がそ
の受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したと
きに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」
〈解説〉

要物契約から、諾成契約となった。

 

賃貸借

第604条 存続期間を20年から50年とされた。
〈解説〉

太陽光発電施設など建物でないので借地借家法の適用を受けないものの需要が増えたため。

 

第605条の2(新設)
「前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。」
〈解説〉

サブリースの普及に伴い、判例の明文化を図った。
→ 判例は、賃貸人たる地位の留保については当事者の合意だけでは足りない(賃借人の同意を個別に得る必要がある)としていた。
→ 判例変更 業界のニーズに応えた形。
地位の移転については、所有権移転登記が対抗要件となるが、地位の留保については、対抗要件が定められなかった。賃貸人たる地位のみの移転も同じ。
→ 債権者が賃料債権を差し押さえる場合に、不測の損害を被るおそれがある。


第605条の3(新設)
〈解説〉合意による地位の移転(605条の2以外の場合をさす。)

 

第605条の4(新設)
〈解説〉不動産賃借人の賃借権そのものに基づく請求権を認めた。
→従来は、所有権に基づく妨害排除請求権を、代位行使。

 

第606条
「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。」

第607条の2

「賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人はその修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。」
第609条 耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。」
第611条
「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。」
〈解説〉

判例の明文化であるが、賃料減額については、これまでは請求することを要していたが、今後は当然に減額されることになる。
第621条 〈解説〉賃借人の原状回復義務について判例を明文化
→ 通常損耗や経年劣化は含まれない。
第622条の2〈解説〉 敷金について判例を明文化した。

 

債権者代位権

第423条
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。
ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。
〈解説〉

そもそも債権者代位権とは、債務者の財産を保全するための制度。債務者が無資力であるにもかかわらず債権の取り立てをしない場合、債権者は債務者に代わって取り立てることができる(本来型)。
これは強制執行の手続があまり整備されていなかったフランスの制度にならったものであるが、わが国では強制施行の手続が完備されているため、財産の保全手続としてはあまり意味がない。わが国では、特定債権の保全(たとえば登記請求権)とか執行目的に馴染まない権利の保全に役立っている(転用型)。
※履行期前に債権者代位権を行使する場合、保存行為以外のときは、裁判上行使する必要があったが、利用が少ないため廃止された。履行期前の代位権行使ができなくなった。
その他は、判例の明文化。不動産登記請求権には影響がない。(第423条の7)
※その他、可分債権の場合の代位権の範囲、直接の引渡等の請求、相手方の抗弁権などは判例を明文化した。

 

第423条の5
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。

この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行を請求することを妨げられない。
〈解説〉

※判例変更。従来は、債権者が代位行使に着手し、債務者が通知を受けるか了知したときは、債務者は取立等の処分権限を失うこととされていたが、債務者保護にかけると批判があった。
→ 債権者代位権を行使しにくくなった。

 

第423条の6
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。

 

詐害行為取消権

旧424条
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
〈解説〉

詐害行為取消権の本質的内容は①詐害行為の取消(形成権)、②逸出財産の取り戻し(債権的請求権)、③両者の結合したもの(折衷説)の各説がある。債務者の無資力を要件とし、債権者代位権のように転用型は認められていない。

 

改正法では
・破産法との逆転現象の解消
※破産法の否認権に基本的な要件事実を合わせる。(424条~424条の6
※債務者に対する訴訟告知義務(424条の7
※相当価格処分について原則詐害行為性を否定(424条の2
※30日以内の要件(424条の3
※過大な代物弁済の超過部分の取消(424条の4
※受益者・転得者の全員が悪意でなければならないとした。(424条の5
※その他は判例の明文化

 

第425条
詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。
〈解説〉

これまでは債務者に判決の効力が及ばなかったため、改めて債務者に対し不当利得返還請求を行う必要があったが、直接請求できるようになった。

 

連帯債務

・請求と免除と消滅時効については、絶対的効力事由ではなくなった。
原則相対的効力(441条)、更改、相殺、混同のみ絶対的効力事由
・連帯保証の場合は、請求は絶対的効力事由であることに注意
・連帯債務者の負担部分は、固定的な数字ではなく、割合であることを明らかにした。
・免除と時効の場合の求償関係を整理
たとえば、連帯債務者A(10)、B(10)、C(10)がおり、A が免除を受けた場合、従来はBC で合計20支払えば良かったが、改正により合計30を支払わねばならなくなった。そのかわり、BC はAに対して10の求償請求をすることができるようになった。

 

弁済

第三者の弁済
従来は、利害関係を有しない第三者による弁済は債務者の意思に反しない限り有効で、債権者は受領を拒絶できないとされていた。
→ しかし、後に債務者の意思に反することが明らかになれば、債権者は受領したものを返還しなければならなくなり、批判があった。
→ 今回の改正で、債権者は受領を拒絶できることとなった。

預金又は貯金の口座に対する払込による弁済
「債権者がその預金又は貯金にかかる債権の債務者に対してその払込に係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時」

 

弁済による代位
抵当権の被担保債務を弁済した第三者は、債権者に代位することができる。
従来は、第三者に代位を主張するにはあらかじめ代位の付記登記をする必要があった。
→ 今回はこの部分が改正され、付記登記が必要なくなった。(ただ執行のためには何らかの公文書は必要)
→ 弁済済みの抵当権付不動産を購入する場合、その弁済が、第三者弁済でないか確認する必要が出てくる。
→ 抵当権を抹消してしまえば代位者も権利を主張できないと考えられるが、実体関係の確認を怠ったという理由で登記手続をした司法書士が処分される可能性はある。

 

一部弁済による代位
一部弁済をした第三者は、債権者と共に抵当権を行使することができる。従来は、一部弁済をした代位者が独自に抵当権を実行できるとする判例があったが、債権者の権利行使の機会を奪うものとして批判があった。
→ 今回の改正により、債権者が代位者に優先することを明確にした。すなわち、債権者が単独で権利行使ができるのに対し、代位者が権利を行使するには債権者の同意が必要とされた。

 

相殺

従来は、不法行為によって生じた債権を受動債権として相殺することは禁じられていた。しかし、「不法行為」といっても様々であるので、その射程範囲が広すぎるとして批判があった。
→ 今回の改正で受動債権として相殺が禁止されるのは、①悪意による不法行為に基づく損害賠償の場合、②人の生命又は身体の侵害による損害賠償の場合の2つに絞られた。②については、債務不履行によるものも含まれることに注意。

 

更改

債務者の変更の場合
「更改前の債務者の意思に反する」というのは要件ではなくなった。
旧債務者には通知で足りることとなった。
「年月日債務者更改による新債務担保」

 

債権者の変更の場合
三者(新旧債権者と債務者)の契約による。
「年月日債権者更改による新債務担保」旧抵当権者が登記権利者・設定者が義務者になる。

 

第三者のためにする契約

第537条第2項が新設
「第三者」は契約当時現存し、または特定されている必要はない旨が明文化された。
第538条
第三者のためにする契約において、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合でも、契約の相手方は、第三者の承諾を得なければ契約を解除することができない(通説の明文化)。
不動産売買の場合で、従来とは特に変化はないと思われるが、この形式を採用する場合には、売り主の保護を十分に考える必要がある。
また最終取得者である「第三者」は契約の当事者ではないので解除権は無いことに注意。

 

契約上の地位の移転

第539条の2で明文化された。
→契約の相手方の承諾は必要とされる。登記原因証明情報に明記が必要。

 

法定利率

第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3%とする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各機の初日の属する年の6年前のとしの1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る)に係る利率の平均をいう)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1%未満の端数があるときは、これを切り捨てる)として法務大臣が告示するものをいう。

 

第419条(新)
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
(参考)第419条(現)
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の 額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による

 

〈解説〉

法定利率の引き下げ【新404条2項】
→ 施行時に年3%に
緩やかな変動性の導入【新404条3~5項】
→ 3年毎に見直し、1%刻みで変動

(変動制の具体的内容)

3年を「1期」として、「1期」ごとに変動
日銀が公表している貸出約定平均金利の過去5年間における短期貸付の平均金利の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満切捨)を「基準割合」とする。
直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満切捨)に相当する割合を、直近変動期における法定利率に加算し、又は減算する。
債務不履行の損害賠償額の利率【新419条】
→ 履行遅滞となった最初の時点での法定利率適用
商事法定利率の廃止【現商法514条削除】
→ 商行為による債務についても民法の法定利率適用

 

中間利息控除

第417条の2(中間利息の控除) 【新設】
1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。
第722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺 )【新】
第417条および第417条の2の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
(参考)第722条(損害賠償の方法及び過失相殺) 【現】
第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

 

〈解説〉

(中間利息控除とは)
交通事故などの不法行為等による損害賠償は、将来の逸失利益(将来取得するはずであった利益)を含めて事故時点からの請求が可能
→ 「中間利息控除」とは、不法行為等による損害賠償において死亡被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入から運用益を控除すること
この控除の割合は法定利率による(最判H17.6.14)
ホフマン形式(単利)とライプニッツ方式(複利)

 

定型約款

第548条の2(定型約款の合意)
定型的取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ)の個別条項についても合意したものとみなす。
① 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき
② 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

 

〈解説〉

1.対象とする約款(定型約款)の定義
① ある特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引で
② 内容の全部又は一部が画一的であることが当事者双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義した上、この定型取引において
③ 契約の内容とすることを目的として、その特定の者より準備された条項の総体
2.「定型約款」という名称
従来の様々あった「約款」概念と切り離して、規律の対象を抽出したことを明らかにするための名称
【該当例】鉄道・バスの運送約款、保険約款、インターネットの利用規約等
【非該当例】一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書雛型、労働契約の雛形等

3.民法の原則によれば契約の当事者は契約の内容を認識しなければ契約に拘束されない。
→ 「定型約款」については、細部まで読んでいなくても、その内容を契約内容とするむねの合意があるのであれば、顧客を契約に拘束しても不都合は少ない
→ 明示の合意がない場合であっても、定型約款を契約内容とする旨が顧客に「表示」された状態で取引行為が行われているのであれば、同様に不都合は少ない
4.顧客は定型約款の条項の細部まで読まないことが通常であるが、不当な条項が混入している場合もある
→ 顧客の利益を一方的に害するような条項は契約内容とならないようにする余地を認めることが必要

 

第548条の3(定型約款の内容の表示)
定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
2 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一次的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。

 

〈解説〉

1.定型約款が契約の内容となるための要件(組入要件)
定型取引を行うことの合意あるときで、次の場合は、定型約款の条項の内容を相手方が認識していなくても合意したものとみなし、契約内容とことを合意
① 定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合
② (取引に際して)定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に「表示」していた場合
(注)相手方への「表示」が困難な取引類型(電車・バスの運送契約等)については「公表」で足りる旨の特則が個別の業法に設けられる予定となっている。

2.約款が契約内容とならない場合
(定型取引の特質に照らして)相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則(民法1条2項)に反する内容の条項については、合意したとはみなさない(契約内容とならない)ことを明確化(548-2-2)
Ex) 抱き合わせ販売等
定型取引を行う合意の前に相手方から定型約款の内容を示すよう請求があった場合に、定型約款準備者が正当な理由なくその請求を拒んだ場合には、定型約款の条項の内容は契約内容とならない(548-3)

 

定型約款の変更

第548条の4(定型約款の変更)
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意することなく契約の内容を変更することができる。
①定型約款の変更が相手方の一般の利益に合致するとき。
②定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に関する事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3 第1項第2号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければその効力を生じない。
4 第548条の2第2項の規定は、第1項の規定による定型約款の変更については、適用しない。

 

〈解説〉

1.約款変更の改正法内容
次の場合には、定型約款準備者が一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが可能であることを明確化
① 変更が相手方の一般の利益に適合する場合
又は
② 変更が契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的な場合
2.約款変更のポイント
相手方との個別の合意なくても行える点にメリット(548-4-1)
相手方にとって有利であるか否かを問わず、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨および変更後の定型約款の内容・効力発生時期をインターネット等で周知(548-4-2)
相手方の一般利益に不適合なら、変更内容が契約目的に反せず、かつ、変更の必要性、内容の相当性、変更ある旨の定めの有無その他の事情に照らして合理的である必要(548-1-1-2)
相手方の一般利益に不適合なら、効力発生時期の到来前に、周知を行わなければ、効力が生じない

 

消滅時効

(債権等の消滅時効)
 第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効よって消滅する。
一 債権者が権利を行使することできることを知った時から五年間行使しないとき。 
二 権利を行使することができる 時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないと きは、時効によって消滅する。
3 前二項の 規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を専有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

 

〈解説〉

①職業別の短期消滅時効は全て廃止

②商事時効(5年)も廃止

③権利を行使することができる時から10年という時効期間を維持しつつ、権利を行使することができることを知った時から5年という時効期間を追加した

 

(人の生命又は身体の侵害による損賠償請請求権の消滅時効 )

第百六十七条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第ニ号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

 

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

ニ不法行為の時から二十年間講師しないとき。

 

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第七百二十四条のニ 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

 

〈解説〉

①不法行為債権の長期消滅時効(20年)の特則を置いた。

②人の生命又は身体を害する不法行為につき、長期消滅時効(知った時から5年に延長)の特則を置いた。

 

(定期金債権の消滅時効)第百六十八条 

〈解説〉

債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年、上記権利を行使できる時から20年の消滅時効とした。

定期給付金債権の短期消滅時効(5年)の定めが廃止された。

 

(相対的効力の原則)第四百四十一条

〈解説〉

連帯債務者の一人について生じた事由は、更改、相殺、混同を除いて、他の連帯債務者に対してその効力が生じないとした。

従って、債権者の請求、免除や債務の時効は、当該債務者ごとに相対的なものとなった。

 

(時効の中断・停止の見直し)第百四十七~百六十一条等

これまで使われていた、「中断」「停止」という用語の変更と整理を行った。

①「中断」を「完成猶予」と「更新」の2つの概念に変更した

②「停止」を「完成猶予」と変更した。

③新たな時効完成猶予事由を追加した。

 

保証

第465条の6(公正証書の作成と保証の効力)

〈解説〉

①事業用の借入について個人が保証人となる場合、一部例外(経営者自身が保証人になる場合など)を除いて、保証契約の1ヶ月以内に公正証書を作成し、そのなかで保証人があらかじめ保証意思を表示しなければならない。

②公正証書は、保証契約とは別に作成する必要がある。

→上記の要件を満たさない場合は、保証契約は無効である。

 

第464条の10(情報提供義務)

〈解説〉

①事業用の借入について個人が保証人となる場合、債務者は次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

ニ 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容。

②違反した場合保証契約の取消事由となる。

 

第458条の2(主たる債務の履行状況に関する情報の提供)

〈解説〉

①保証人の請求に対する債権者の情報提供義務

②事業用借入に限定されず、保証人が法人であっても適用される

 

第458条の3(期限の利益喪失時の情報提供)

〈解説〉

①債務者が期限の利益を喪失したときは、債権者は保証人に対してそれを知ってから2ヶ月以内にその旨を通知しなければならない。

②義務に違反した場合には、期限利益喪失から通知をすべきときまでの遅延損害金を請求できない。

 

第465条の2(個人根保証契約の規制)

〈解説〉

①個人貸金等根保証は平成16年に規制されたが、それに加えて個人根保証一般について規制を導入した。

②極度額を定めなければ根保証契約は無効である

 

第448条(保証人の負担が主たる債務より重い場合)

〈解説〉

①保証人の負担が主たる債務より重い場合、主たる債務の限度に縮減する。

②主たる債務が保証契約締結後に加重されても、保証人の債務は加重されない

 

債権譲渡

第446条(債権の譲渡性)

〈解説〉

①債権の譲渡禁止特約に物権性を認めていた旧条を廃止し、譲渡禁止特約および譲渡制限特約が結ばれていても、債権譲渡の効力に影響がない旨を規定した。

②譲渡制限特約付債権が悪意重過失の譲受人に譲渡された場合は、債務者の保護として、譲渡人に対する弁済を認め、譲受人に対する履行を拒絶できることとした(466条3項)

 

466条の2(弁済供託)

〈解説〉

譲渡制限特約付債権が譲渡された場合には、譲受人の善意無過失等の有無に関わらず、債務者は債務履行地の供託所に供託できる。

 

第446条の3(譲渡人が破産した場合)

〈解説〉

譲渡制限付債権の悪意重過失の譲受人であっても、譲渡人が破産した時は、債務者に債務履行地の供託所に供託させることができる。

 

第466条の5(預貯金債権の譲渡禁止特約の物権性)

〈解説〉

預貯金債権は譲渡禁止特約が付されているのが一般的であり、事務の大量処理のため、譲渡禁止特約に物権性を認める必要があるため特約を設けている。

 

第468条(債権譲渡における債務者の抗弁)

〈解説〉

①旧468条では異議をとどめない承諾により、抗弁権が切断されるとしていた規定を廃止した。

②抗弁権を切断するためには、別途債務者から抗弁権放棄の意思表示を取り付ける必要がある。

 

第466条の6(将来債権の譲渡性)

〈解説〉

①将来債権の譲渡性は判例上認められていたが、明文化した。

②将来債権譲渡の債務者への通知前に、債権者と債務者との間で譲渡制限特約が付された場合、譲受人が債務者対抗要件を備えるまでは、譲受人の悪意を擬制する。

 

契約の成立

1.対話者に対する契約の申込みの効力等の明記

第525条(承諾の期間の定めのない申し込み)

 〈解説〉

①隔地者に対する、承諾の期間を定めない申し込みについての規定はあったが、対話者に対して行った承諾の期間の定めのない申込みについての規定を追加した。

②対話継続中は撤回が可能であり(525条2項)、対話継続中に承諾がなければ申込みの効力は消滅する。(525条3項)

 

2.隔地者間の契約の成立時期の見直し

〈解説〉

①旧526条1項は、隔地者間の契約では到達主義の例外として、「発信主義」を取っているが、この規定を廃止し、到達主義に統一した。

②これまでの発信主義の下では意思表示がされ効力が生じてから、意思表示が到達するまで時間がかかっていたが、通信手段の発達により時間がかからなくなっていることを考慮した。

 

解除

1.債務が履行されない場合に、債権者は債務者に帰責事由がなくても契約を解除できる事になった。(541条、542条

 

①債務が履行されない場合に、債務者の帰責事由がなくても契約を解除できる。541条、542

②債務不履行が社会通念上軽微な時は、契約を解除できない。(541条但し書き)

③債務不履行が債権者の責任であるときには、債権者は契約を解除できない。(543条

④解除は相手方にたいして期間を定めて履行の催告をして、その期間内に履行がない時にすることができる。541条

 

2.無催告解除をすることができる場合を明確化し、追加した。(542

 

無催告解除は、下記の場合に認められる

①債務の全部の履行が不能であるとき

②債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

③債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約の目的を達成することができない時。

④債務者が履行期日を遵守しなかった場合において、その期日に履行をしなければ、契約の目的を達成できないものであった時。

⑤債務者が履行をせず、債権者が催告をしたとしても履行がされる見込がないことが明らかである時。

 

債務不履行及び危険負担

1.原始的不能の際でも、契約を当然に無効としない。(第412条の2第2項

 

①原始的不能の場合、債権者は、解除の一般法理に従い契約を解除することができる(新542 条1 項1 号)。
②原始的不能の場合、債権者は債務者に対して、債務不履行に基づく損害賠償請求の一般法理に従い、損害賠償を請求することができる(新415 条2 項1 号)。賠償を請求できる範囲は、履行利益の範囲まで及び得るとする説が有力である。

③上記の損害賠償は、債務者に帰責事由がなければ請求できない(新415 条1 項)。
④原始的不能の場合であっても、債権者は、債務者に対して反対給付をする義務を当然に免れるわけではなく、反対給付の義務を消滅させるためには、契約を解除しなければならない。ただし、現実には反対給付をする必要はない(新536 条1項)。

 

2.特定物の売買など、特定物を目的物とした物権の設定又は移転の双務契約における危険負担について、債権者負担主義から債務者負担主義に変更(第536条1項

→特定物、不特定物に関わらず、債務者主義で統一された。

 

3.危険負担の効果を、反対給付の履行の拒絶とする。(第536条1項

→反対給付の履行の拒絶ができるだけで、双方に帰責事由がない危険負担の場合は、債権者は損害賠償請求はできない。

 

4.債権者は、債務者に債務の不履行があれば、債務者に帰責事由のない場合でも、契約を解除することができる。(第541条~第543条

 

売買における(瑕疵)担保責任

(1)不特定物のみでなく、特定物の売買においても、目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合には、買主は売主に対して、目的物の修補、代替物の引き渡し又は不足分の引き渡しによる履行の追完を請求し又は解除をすることができる(新562 条1 項、新564 条)(契約責任説の採用)。

 

(2)目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合には、買主は売主に対して、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、代金の減額請求をすることができる(新563 条1 項)。

無催告解除の要件に準じる要件に該当するときは、無催告で代金減額請求をすることができる(新563 条2 項)。


(3)目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合であっても、売主に帰責事由がないときは、買主は、損害賠償請求ができない(新564 条、新415 条1 項)。


(4)解除は、解除の一般的な規定(新541 条、新542 条、新543 条等)に従う。


(5)損害賠償請求は、債務不履行の規定(新415 条)に従う。これにより、損害賠償の範囲は、履行利益に及び得ることになった。


(6)移転した権利が契約の内容に適合しない場合においても、目的物に契約不適合があったときの規定を準用している(新565 条)。


(7)目的物の種類又は品質が契約に適合しない場合において、買主の権利行使期間を、契約に適合しないことを知ってから1 年以内にその旨の通知をすることに変更し(新566 条)、権利が契約の内容に適合しない場合又は数量の不足の場合の担保責任については、期間制限を設けない。


(8)契約不適合が、買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は履行の追完請求及び代金減額請求をすることができない(新562 条2 項、新563条3 項)。

解除もすることができない(新543 条)。

 


(9)担保責任に関する契約の不適合(瑕疵)が「隠れた」ものである旨の要件を削除(新562 条等)。

 

委任

第648条3項(割合請求の請求可能)

〈解説〉

これまでも、委任者の責任により委任事務が終了した場合には、受任者は報酬の全額を請求できる旨の規定があったが、受任者に責任がある場合には、報酬請求ができなかった。

そこで、受任者の責任により委任契約が終了した場合にも、割合報酬を請求できることとした。

 

第648条の2(成果報酬の合意の明文化)

 

第651条(委任の解除)

〈解説〉

委任契約の各当事者はいつでも解除ができるが、次の場合には損害賠償が必要である。

一相手方に不利な時期に委任を解除した時

ニ委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除した時