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旧民法における養子縁組・継親子・嫡母庶子

養子縁組

1 養子縁組とは

旧民法837条以下及び旧戸籍法88条の規定により、養親の家に養子が入り、養子に養親の嫡出子たる身分を取得させることを言う。

 

旧民法の養子の成否は、必ずしも戸籍の記載から直接的に読み取ることができるわけではなく、旧民法上の解釈から判断しなければならない場合がある。

 

2 養親子・養親子関係

養親子とは、養子縁組をした養親と養子のことである。

養子縁組によって生じる法的効果を養親子関係という。

 

3 養子縁組をする場合

①血縁関係のない者を養子にする場合

②自分の庶子または私生子を養子とする場合

③継親は継子を、嫡母は庶子を養子とする場合

④自分の嫡出子だが、他家にある者を養子とする場合

 

④の実益は他家にある自分の嫡出子に第一種法定推定家督相続人の地位を与えることができる点にある。

他家にある自分の嫡出子を家に入れる方法には、親族入籍や引取入籍があるが、旧民法972条によって、家督相続の順位が下がることになる。

 

4 男子の養子の制限

戸主が男子を養子にするときは、法定家督相続人である男子がいないことが条件であった。(旧民法839条)

但し、婿養子をすることはできる。

 

5 必要的夫婦共同縁組

配偶者がある場合、夫婦共同で縁組しなければならない。(旧民法841条)

養親が夫婦の場合だけではなく、養子が夫婦の場合にも、必要的養子縁組が規定されていた。

 

6 養子縁組の効力

(1)嫡出子たる身分

養子縁組は、縁組届け出の日から効力を生じ(旧民法847条、775条、旧戸籍法88条)、縁組の日から養親の嫡出子たる身分を取得する。(旧民法860条)

(2)氏

養子は単身者であっても夫婦であっても全て縁組により養親の家に入り、養親の氏を称する。(旧民法861、746条)

(3)相続権

養子は家督相続については、養子縁組の日に生まれたものとして、法定推定家督相続人の順位に従う。(旧民法860条、 970条)

従って昭和5年生まれのAと昭和8年生まれのBが養子となっていた場合、Bが先に養子となっていた場合には、家督相続人の順位はBが優先することになる。

 

(4)親族関係

養子と養親およびその血族との間には、養子縁組の日より血族関係と同一の親族関係が生じる。(旧民法727条)

一方、養親及びその血族と、養子の血族との間には親族関係は生じない。

 

(5)養子縁組と代襲相続

縁組前に生まれた子に代襲相続権はない。

縁組後に生まれた子は、家督相続及び遺産相続における代襲相続人となる。

また、養子夫婦の一方が養親の実子の場合、縁組前の子も実子を通して血族的な孫であり、代襲相続人となる。

 

7 遺言養子

遺言で養子ができた

養親の死亡時に養子となる。(旧民法848条)

 

8 戸籍の記載

養子縁組に関する事項は、養親の事項欄に記載する必要がなく、養子の事項欄に記載すれば足りるとされていた。

従って、養親の欄から養子たる相続人が特定できないが、養子は必ず養親の戸籍に入ったので、戸籍内の家族を調査すれば、事項欄や額書に記載され、父母の欄の隣に養父母の欄があり判別可能である。

 

9 養親子関係に基づく親族関係の終了

死亡・縁組取消・離縁・養親の去家

(1)死亡

死亡によって当事者の養親子関係は解消するが、養子縁組自体は解消せず、生存者の親族関係には影響がない。

(2)縁組取消(旧民法852、859条)

一度成立した縁組関係を将来に向けて解消する。

離縁と同じ効果がある。

(3)離縁(旧民法730、862条)

①離縁により、養親と養子の親族関係は終了する

②養子は養親の嫡出子たる身分を失う

③養子と養親の血族との法定血族関係は終了する

④養子と養親の配偶者との継親子関係も終了する

⑤養子は離縁により実家に復籍し、実家における相続権などの身分を回復する

➅養子が戸主となった後は、隠居しない限り離縁できない

 

・養子たる夫が離縁した場合の妻

妻は離縁した夫の髄従し養家を去り、親族関係は終了する

一方、妻自身が夫の養子縁組前から養子であった場合には、離縁した夫に髄従しても、養親及びその血族との親族関係は終了しない。

 

・養子である妻の離縁

夫は離縁か、離婚かを選択しなければならない

 

10 養親が養家を去りたるとき(旧民法730条2項)

養親及びその実家の血族と養子との間の親族関係は終了する。

これは、養親自身が、養子または婚姻により他家から入ってきたことを前提としている。

(例)養親Aが婚姻により他家から入ってきていた場合、離婚により養家を去ったときは、養親とその実家と養子Bとの間の法定血族関係は終了する。

養親子関係が消滅しても、養家に残してきた実子Cとの親族関係は終了しない。

養親の去家が、本家相続、分家、廃絶家再興による場合には、養親子関係は終了しない。

(登記上の注意点)

他家から入ってきていた養親が離婚等により家を去った場合には、登記官が職権で、養親の氏名及び続柄を抹消し、養子の事項欄に「年月日養母家を去りたるに付き年月日養親の氏名及び養親との続柄を記載抹消」と記録するが、記録されない場合があり、慎重に戸籍を読み取って養親子関係が存続しているかどうか判断する。

 

11 応急措置法以降の養親子関係

(1)応急措置法施行と旧民法中の去家

昭和22年5月3日応急措置法施行前に養親が去って消滅した養親子関係は、応急措置法施行によっても回復しない。

(2)応急措置法施行前後と代襲相続権

①旧民法中に養親が去家した場合、孫の代襲相続権はない

②旧民法中に養子が去家し、縁組後に生まれた子が家を去らない時には、代襲相続権がある

③応急措置法施行後に養親と養子が離縁した場合、養親と養子の子との親族関係は終了し代襲相続権はない。

 

(3)戸籍上の留意点

旧民法中には夫婦共同縁組の原則があり、養親の一方が死亡後に、生存している養親と離縁した場合には、死亡した養親との間でも離縁の効力があった。

しかし、応急措置法施行後の離縁においては、養親の片方との離縁も認められている。

 

12 婿養子縁組(788条2項、839条)

婿養子縁組とは、養子縁組と同時に養親の娘と婚姻することを言う。

一人娘や姉妹のみの姉は、法定推定家督相続人であるため、法定推定家督相続人は他家に入ることができないという規定により結婚できないことになる。

この場合に婿養子制度が利用された。

婿養子の家督相続の順位は配偶者の順位と同じである。

従って次女と婚姻した婿養子は、家督相続の順位では長女に劣ることになる。

 

継親子

1 継親子・継親子関係とは

旧民法には定義がないが、判例によれば「継子とは配偶者の子で、婚姻の当時配偶者の家にありたる者、又は婚姻中にその家に入りたるもの」とされる。

継親子関係とは、継子とその親の配偶者との法定親族関係を言う。

 

2 継親子の要件

①継親となる者は、継子の親(実母、養母、継親を問わない)の配偶者であること

②継子は配偶者の子(嫡出子、養子、庶子を問わない)であること

③継親と継子は同じ家に住むこと

 

3 継親子関係の効力

継親と継子との間には親子間におけるのと同じ親族関係が生じる(旧民法728条)

親族関係が生じるのは継親子関係が生まれたときからである。

(1)その他の親族関係

継親子関係発生後に生まれた継子の子と継親との間には準血族関係が生じ、継子の出生子は継親と家を同じくする時には、継子を通じて継親の孫となる

継父母が継子の家において出生した実子と継子との関係は兄弟姉妹である。

 

(2)継親子関係と養父母関係の違い

養親子関係は養子と養親の血族との間にも効力があるが、継親子関係は継子と継親の血族の間では発生しない。

例えば、継子は継親の親の孫にはならない。

 また(1)の例外を除いて継親の実子と継子は兄弟姉妹にはならない。

 

4 継親子関係と家督相続及び遺産相続

遺産相続に関しては、継親の実子、養子と継子は同順位の相続人となる。

家督相続に関しては、その家の事情を考慮するとされていた。

①妻の連れ子たる継子と親族入籍の二男では二男を家督相続人とする

②女戸主の先夫の子と入夫婚姻によって生じた二男とでは、継子(先夫の子)が家督相続人となる

 

5 継親子関係の消滅

①一方当事者の死亡

②継親の離婚又は婚姻の取消

③父または母の死亡後の継親の去家

④養子である継子と養親である配偶者の離縁

 

(1)継親子関係が消滅しない場合

①継親が配偶者とととに分家しても継親子関係は消滅しない

②生存配偶者たる継親が廃家のうえ継子と共に他家に入った場合は継親子関係は消滅しない

③一度継親子関係が発生すると、継子が婚姻等により他家に入っても、継親子関係は消滅しない。

 

(2)応急措置法施行による消滅

継親子関係は応急措置法の施行により消滅し、一親等の姻族となる。

 

6 戸籍上の留意点

旧民法当時の継親子関係によって生じた、相続その他の法的効果は現在も有効であり、旧民法中に相続等が発生したか否か慎重に判断する必要がある。

 

7 家附の継子

家附の継子とは、継子の中でもその家生来のものを言う。

家附の継子の中で法定推定家督相続人であった者は、その家を継ぐ事になっていものである。

この場合、他家から来た継父が戸主となっていた場合、そのまま新民法が施行されると、継親子関係が消滅し、相続権がなくなるという不利益を受けるため、民法附則により手当がなされた。

 

嫡母庶子

1 嫡母庶子・嫡母庶子関係とは

父が認知した非嫡出子を父との関係で庶子というが、その父の妻であって、庶子の母でないものが同じ家にいる場合、庶子と母の関係を嫡母庶子関係という。

 

2 嫡母庶子の要件

庶子の父が婚姻して妻がいること。

その妻と庶子が家を同じくしていること。

 

3 嫡母庶子の効力

嫡母と庶子との間は親子間と同一の親族関係が生じる。

嫡母の血族と庶子との間には親族関係は生じない。

 

(1)その他の親族関係

婚姻の時期と夫の庶子と家を同じく時期の前後を問わないため、夫が婚姻前に認知した庶子と妻との間には嫡母庶子関係が生じる。

庶子の父がその妻(嫡母)死亡後に再婚した場合、その後妻も嫡母となる。

嫡母庶子関係成立後に出生した庶子の子と嫡母とは準血族関係を生じ、庶子の出生子は嫡母と家を同じくする場合にのみ、庶子を通じて嫡母の孫となる。

 

(2)嫡母庶子関係と養親子関係の違い

継親子関係に準ずる

 

4 嫡母庶子関係と家督相続及び遺産相続

家督相続人の順位(旧民法970条)及び遺産相続分(旧民法1004条)においては庶子としての範囲で権利を享受する。

 

5 嫡母庶子関係の消滅

継親子関係における内容に準じる。

(1)嫡母庶子関係が消滅しない場合

継親子関係における内容に準じる。

 

(2)応急措置法施行による消滅

継親子関係における内容に準じる。

 

6 戸籍上の留意点

継親子関係における内容に準じる。