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自己破産

自己破産とは

自己破産は債務整理手続きの一つであり、借金をゼロにすることができるが、土地建物等自分の財産を失う可能性もある。

「任意整理」「個人再生」が債務の圧縮を目指すのに対して、自分の財産を売り払い債務の弁済に当てる代わりに、他の債務を帳消しにするという手続きです。

財産には、不動産、自動車、現金、預貯金、他人への貸金、保険の解約返戻金、将来受取る退職金等があります。

 

自己破産のメリットとデメリット

1.自己破産のメリット

(1)債務がゼロになる

「任意整理」「個人再生」は債務の縮減をするのに対して、「自己破産」は債務をゼロにする

 

(2)定期的な収入がなくてもいい

「任意整理」「個人再生」は債務の弁済計画を履行するために、収入が必要ですが、「自己破産」は収入等が不要である

 

(3)売却しなくてもいい財産がある(自由財産)

差押禁止財産、99万円以下の現金、破産手続開始後に取得した財産の3つを自由財産といい、売却されて失うことはありません。

差押禁止財産には、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、パソコン等日用品がありますので、生活必需品は失わずに済みます。

 

(4)破産手続き終了後の財産は失わない

手続き終了後に取得した財産は一切失わずに済みます

 

2.自己破産のデメリット

(1)財産をうしなう

次の財産は没取され、売却等処分され債権者に分配されます

①不動産②20万円を超える財産③99万円を超える現金

預貯金は解約して現金として持っていれば99万円までは没収されません

 

(2)家族や保証人等に損害を与える

家族のもっている財産が破産者の出資により取得したものである場合、没収される可能性がある

破産者が免責されても保証人の責任は残る

 

(3)資格制限を受ける

弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、警備員、後見人等は破産手続き中は職に就けない

 

(4)クレジットカードやローンを5年以上利用できない(ブラックリスト)

ブラックリストに載るとローンを利用できなくなる

住宅ローンなどはしばらく組めませんし、携帯電話代の分割支払も難しいかも知れません

 

(5)税金や損害賠償金等は免除されない

税金、社会保険料、不法行為による損害賠償債務、養育費、罰金等は免除されない

 

自己破産の手続き

1 管財事件

自己破産の申立があると、裁判所は破産手続きを始める決定をします。

この決定のことを以前は「破産宣告」と呼んでいましたが、名前が変わり、「破産手続開始決定」といいます。

破産者に債権者に分配する財産がある場合などは、裁判所が管財人を選任し(弁護士)、管財人が財産の調査、管理、換価、債権者への分配を行います。

このように管財人が選任される事件を、管財事件といいます。

管財人が選任されたものの、財産調査の結果、破産財団によって破産手続きの費用を支払えない事がわかり、破産手続きの廃止となることも多い(異時廃止事件)

 

2 同時廃止

自己破産の申立時に、破産手続きの費用を支払えないことが明らかな場合にまで管財人を選任するのも無駄ですので、破産手続開始決定と同時に、破産手続きの廃止を宣言することを同時廃止といいます。

ただし、免責不許可事由がある場合には、同時廃止とならない場合があります。

 

〈破産法216条第1項〉

裁判所は、破産財団をもって破産手続きの費用を支弁するのに不足すると認める時は、破産手続きの開始の決定と同時に、破産手続き廃止の決定をしなければならない

 

(1)「破産手続きの費用を支弁するのに不足すると認める時」とは

管財人を選任しその報酬等を含めて、予納金を収める必要がありますが、その予納金すら収めることができない場合に、同時廃止となるといえます。

予納金は「少額管財」手続きでは20万円であり、20万円を支払えない場合には同時廃止になるといえます。(20万円基準)。

「20万円基準」には自由財産は含まれませんが、現金だけは例外で、99万円以下の現金は自由財産とされているものの、33万円以上の現金があある場合には、「破産手続きの費用を支弁するのに不足すると認める時」とは認められず、同時廃止にはならない場合が多い。

 

(2)免責不許可事由(破産法252条1項)

①債権者を害する目的での破産財団に属する財産の毀損等

②破産手続き開始の遅延を目的とした債務の負担等

③他の債権者を害する態様の特定の債権者に対する弁済等

④浪費・賭博等による債務負担

⑤破産手続き開始原因を知りながら欺罔による原因隠蔽等

➅業務、財産関係の種類等の隠蔽など

 

3 免責手続

管財事件および同時廃止事件が終了しても債務は残っていますので、その債務を免責するかどうかを同時並行で調査しながら最終的に免責許可を貰う必要があります。

以下の手順により免責が認められるかどうかが決まります

 

1.免責調査

2.免責審尋

3.免責に関する決定