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納税猶予

贈与税の納税猶予

1 農業後継者が農地等の贈与を受けた場合の納税猶予

(1)制度の概要

農業を営んでいるものが、その所有する農地の全部並びに採草放牧地及び準農地の一定部分(特定農地)を後継者である推定相続人に贈与した時には、贈与税の納税が猶予される。

贈与者または受贈者の死亡により、猶予された贈与税額は免除される。

ただし、贈与者が死亡した時には、相続したものとして相続税が課せられる。

 

(2)贈与者の条件

①3年以上農業を営んでいること

②過去に相続時精算課税制度を選択した農地等の贈与をしていないこと

③贈与した年にすでに別の贈与をしていないこと

④過去に贈与税の猶予を受ける贈与をしていないこと

 

(3)受贈者の条件

①18歳以上であること

②3年以上農業に従事

③贈与農地等で引き続き農業を行うこと

④農業委員会の認定時に認定農業者等であること

*認定農業者とは、次のいずれかに該当するもの

ア 農業経営基盤促進法第12条に基づく農業経営改善計画に係る認定を受けた者

イ あらたに農業を営もうとする者で農業経営基盤促進法第14条の4で規定する青年等就農計画の認定を受けた者

ウ 農業経営基盤促進法第6条第1項に規定する基本構想に定められた同条第2項第2号の要件を満たす者

 

(4)特定農地等の要件

①農地の全部

②採草放牧地の面積の3分の2以上

③準農地の3分の2以上

 

(5)猶予された税を支払わなければいけない場合

①贈与された農地等を譲渡等があった場合

②農業経営を廃止した場合

③推定相続人ではなくなった場合

④継続届出書が提出されなかった場合

⑤担保価値の減少による追加担保の提出に応じなかった場合

➅10年位内に農業の用に供されていない準農地がある場合

⑦都市営農農地等につき、買い取りや特定生産緑地の指定の解除された場合など

 

*農業後継者が農地等の贈与を受けた場合の納税猶予の特例

 

2 非上場株式等の贈与税の納税猶予及び免除

(1)制度の概要

非上場株式等を会社の後継者たる相続人が贈与を受けた場合、一定の要件の下、贈与者の死亡時まで納税を免除する制度である。

なお、贈与者の死亡により、贈与税は免除され、相続があったものとして相続税の対象となるが、「中小企業の経営承継円滑化法」の確認を受ければ、相続税の納税の猶予または免除を受けることができる。(租税特別措置法70条7の8)

 

(2)一般措置と特例措置

 特例措置と一般措置の制度の主な違いは次の表のとおりです。

 

  特例措置 一般措置
事前の計画策定等 5年以内の特例承継計画の提出
【平成30年4月1日から平成35年(2023年)3月31日まで】
不要
適用期限 10年以内の相続等・贈与
【平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日まで】
なし
対象株数(注1) 全株式 総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 相続等: 80%、贈与:100%
承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者 複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化(注2) 承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除 なし
(猶予税額を納付)
相続時精算課税の適用 60歳以上の贈与者から20歳以上の者への贈与
(租税特別措置法第70条の2の7等)
60歳以上の贈与者から20歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
(相続税法第21条の9・租税特別措置法第70条の2の6)

非上場株式等の贈与税の納税猶予及び免除の特例

 

相続税の納税猶予

1 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例

(1)特例の概要

農業経営者の相続人が農地等を相続または遺贈により取得し、引き続き農業を営む場合に、取得した農地等の価格の内で農業投資価格(*路線価図・評価倍率表で見ることができる)を超える部分の価格に対応する相続税の納税が猶予される。

また次のいずれかに該当すれば猶予額は免除される。

①相続人が死亡した時

②特例の適用を受けた相続人がその後継者に生前一括贈与した時

③3大都市圏以外の市街化区域内農地であって、相続税申告日の翌日から20年間農業を行った場合

 

(2)被相続人の要件(いずれかに該当)

①死ぬまで農業を営んでいた人

②農地等の生前一括贈与をした人

③相続税の猶予を受けていた農業相続人または農地の生前一括贈与の特例を受けていた者で、障害により自分で営農ができず

賃借権を設定をし届出をしていた者

④死亡の日まで特定貸付を行っていた者

 

(3)相続人の要件

①納税申告日までに農業を開始し、引き続き農業を行うと認められる者

②農地等の生前一括贈与の特例を受けたもので、年金を受けるため、その推定相続人に賃借権を設定し届出た者

農地等の生前一括贈与の特例を受けたもので、障害のため賃借権を設定し届出た者

④納税申告日までに特定貸付を行った者

 

(4)猶予された税を支払わなければならない場合

①特定農地を贈与した場合

②農業経営を廃止した場合

③継続届出書の提出がない場合

④担保毀損による追加設定に応じなかった場合

⑤準農地が10年以内に農業が行われなかった場合

都市営農農地等につき、買い取りや特定生産緑地の指定の解除された場合など

 

2 非上場株式等の相続税の納税猶予および免除の特例

(1)制度の概要

中小企業の事業承継円滑化法(以下 円滑化法)による都道府県知事の認定を受けた非上場会社の株式又は出資を相続又は遺贈により取得した者が、引き続き会社を経営していく場合には、相続税の納税猶予又は免除を認める制度である。

相続人が死亡した時に、猶予額の全部または一部の納税が免除される。

 

(2)一般措置の概要

円滑化法による知事の認定を受けた非上場会社の株式の相続人であって、引き続き会社経営を行う者は、その相続株式等の価格の80%に当たる価格について、相続税の納税が猶予される。

株式等相続人が死亡したときには猶予納税額の全部又は一部が免除される。

また当該相続人に相続が発生した場合にも、一定の要件を満たすことにより、相続税の納税猶予が認められる。

 

(3)特例措置と一般措置の違い

特例措置と一般措置の制度の主な違いは次の表のとおりです。

 

  特例措置 一般措置
事前の計画策定等 5年以内の特例承継計画の提出
【平成30年4月1日から平成35年(2023年)3月31日まで】
不要
適用期限 10年以内の相続等・贈与
【平成30年1月1日から平成39年(2027年)12月31日まで】
なし
対象株数(注1) 全株式 総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 相続等: 80%、贈与:100%、
承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者 複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化(注2) 承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 譲渡対価の額等に基づき再計算した猶予税額を納付し、従前の猶予税額との差額を免除 なし
(猶予税額を納付)
相続時精算課税の適用 60歳以上の贈与者から20歳以上の者への贈与
(租税特別措置法第70条の2の7等)
60歳以上の贈与者から20歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
(相続税法第21条の9・租税特別措置法第70条の2の6)

 *非上場株式等に関する相続税の納税猶予または免除の特例