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借地借家法

借地権

1 建物所有目的の借地

・建物を所有することを目的にした土地の賃借権及び地上権を借地権といい、借地借家法により保護される。

・資材置き場や駐車場のために土地の賃借をしても借地借家法の対象にはならない。

 

2 地上権と賃借権

(1)地上権と賃借権の違い

・建物所有を目的として土地を借りるには、地上権を設定する方法と賃借権を設定する方法がある。

・地上権は物件であり、賃借権は債権であるため以下のような違いが生じる

①地上権者は登記請求権があるが、賃借権者には登記請求権がない

②地上権者は地上権を土地所有者に無断で譲渡でき、抵当権の設定も可能だが、賃借権の無断譲渡は許されず、抵当権も設定できない。

③地上権は期間の定めがない場合でも20年以上50年以下と長期となり(民法268条2項)土地所有者からの解約申し入れができないのに対し、賃借権の場合20年以下と短期となる(民法604条)上期間の定めがない時は賃貸人は自由に解約できる。

 

(2)借地借家法による修正

・賃借権者は地上権者に比べ上記の①から③のような不利益があるため、借地借家法により修正を行い、賃借権者を以下のように地上権者と同様に保護することとした。

①土地上に登記された建物を所有していれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できる(借地借家法10条1項)。

②賃借権の譲渡や転貸について、賃借人が同意しない場合、裁判所に承諾に代わる同意を求めることができる。(同19条1項)

③借地権の存続期間を30年とし、契約でそれ以上の期間を定めた時はその期間となる(同3条)また契約更新には「正当な理由」がなければ拒絶できない(同6条)。

 

3 普通借地権の存続期間と更新

(1)存続期間

・30年以上の期間と定めた時はその期間、定めがない時は30年、30年以下の定めは無効となる。(法3条、9条)

 

(2)更新

①合意による更新

・最初の更新は20年、2回目以降の更新は10年となる。

②法定更新

・賃借人が更新請求した場合、または継続使用した場合に、賃貸人が異議を述べた場合でも「正当な理由」がない限り、契約の更新が認められる。

 

(3)正当な理由

・更新拒絶の正当な理由の存否については以下の点が裁判で争われる。

①当事者が土地使用を必要とする事由

②それまでの土地の利用状況

③立ち退き料の支払額

 

(4)建物が滅失した場合の再築

①当初の存続期間内の再築

・当初の存続期間を超えて存続する建物の再築には賃貸人の同意を要し、同意した日または再築日のいずれか早い日から20年の期間となる。

・ただし、契約の更新の拒絶には正当な理由が必要となる。

②更新後の再築

・契約更新後に建物が滅失したときには、再築の承諾を得たときには20年の存続が許されるが、承諾がない場合、更新時には「正当な理由」がなくても賃貸人は解約の申入れができる。(法8条)

・賃借人はそれを避けるために、裁判所に対して承諾に代わる許可を求める訴えを提起できる。(法18条1項、2項)

 

(4)建物買取請求権

・存続期間が満了し、契約の更新をしない場合には、賃借人は建物買取請求権を行使できる。(法13条3項)

・債務不履行により契約が終了した場合には、建物買取請求権は行使できない。

 

4 定期借地権

・定期借地権は一般の借地権と違い、更新がされない借地権で以下の三種類がある。

(1)一般の定期借地権

・存続期間を50年以上とし、①契約の更新②建物築造による延長③建物買取請求権がない特約付きの借地権をいう。

・公正証書によってなされる必要があり、定期借地権の登記が必要となる。(法22条)

 

(2)建物譲渡特約付き定期借地権

・設定後30年以上を経過した日に、賃借人が建物を賃貸人に売り渡すことを約束して設定した定期借地権のこと。(法24条)

 

(3)事業用借地権

・事業のように供する建物の所有を目的にした、30年以上50年未満または10年以上30年未満で設定する定期借地権のこと。(法23条)

・公正証書による契約が必要である。

 

(4)一時使用目的の借地権(法25条)

・「臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らか」な場合に認められる。

 

5 借地権の対抗力

①建物の登記による対抗力

・借地上の建物の登記があれば、借地権に対抗力が認められる。(法10条1項)

 

②建物が滅失した場合の対抗力

・滅失後2年間は、必要事項を記載した看板の掲示などで対抗力が認められる。(法10条2項)

 

6 賃料の増額・減額の請求

・地代の額が経済事情の変動などで、不相当となった場合、当事者は賃料の増減の請求ができる。(法11条1項)

・地代増減の訴えは、調停前置主義が採られていて、まず民事調停を申立て、調停が成立しない時に初めて訴えを提起できる。(民事調停法24条2)

 

借家(建物賃貸借)

1 借家の存続期間と解約

(1)普通借家

①存続期間の定めがある場合(法29条)

・1年以上としなければならず、更新しない場合には、1年前から6ヶ月前の期間に相手方に通知が必要である。(ただし、賃借人の側からの更新しない旨の通知が30日前までになされることを定める契約書は有効である)。

・ただし、賃貸人の側からの解約申入れには「正当な理由」が必要である。

②存続期間の定めがない場合

・賃借人の側からの解約申入れは3ヶ月の猶予期間後に終了し(民法617条1項2号)、賃貸人の側からの解約申入れは6ヶ月の猶予期間後に終了する。(法27条1項)

・ただし、賃貸人の側からの解約申入れには「正当な理由」が必要である。

 

(2)定期借家

①取壊し予定の建物の賃貸借

・都市計画法によって建物の取り壊しが予定されている場合や、定期借地権終了時に建物取壊しが予定されている場合などに、取壊し時までの賃借権を認めたもの。(法39条)

②定期借家

・契約の更新のない期限の定めのある建物賃貸借契約のこと。(法38条1項)

・6ヶ月、2年、10年など定期をさだめることができる。

 

2 借家権の対抗力

・建物の引き渡しによって、建物賃借権には対抗力が認められる。(法31条1項)

・賃貸人が変更されても、引き渡しがあれば対抗力があり、新所有者は登記が無けれれば賃料請求はできない。

 

3 家賃の増額・減額請求

①増減請求

・経済事情の変動などで賃料が不相当となったときには、賃料の増減の請求ができる。(法32条1項)

・調停前置主義が採られており、調停不成立の時に訴えを提起できる。

②サブリース契約

・不動産会社が土地所有者に賃貸用オフィスビルの建設資金を融資し、建設後に建物のを不動産会社が借り受けて、転貸を行う場合に、所有者と不動産会社の間で、賃料自動増額特約があった場合に、法32条1項の賃料増減請求ができるのかという問題が発生しました。(センチュリータワー対住友不動産事件)

最高裁判所の判断では、賃料自動増額特約がある場合にも、経済事情の変動による、賃料の増減の請求を認める法32条は排除されないとしています。(平成15年10月21判決)

 

4 転借人等の保護

①転借人の保護

・賃貸人は賃貸借が終了したことを転借人に通知しなければ、契約終了を転借人に対抗できない。(法34条1項)

・通知後6ヶ月後に転貸借が終了する。

 

②借地上の建物の賃借人の保護

・借地権の終了を1年前までに知らなかった、建物の賃借人は、知った日から1年後までの間で、明渡しの猶予を求める訴えが認められている。(法35条1項)