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公益法人

一般社団・財団法人と公益法人との異同

1 機関設計

(1)一般社団法人(法60条から62条)

社員総会+理事

ⅱ社員総会+理事+監事

ⅲ社員総会+理事+監事+会計監査人

社員総会+理事+理事会+監事

社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

 

(2)公益社団法人

*公益認定の基準には①理事会の設置②政令に定める基準に達している場合に会計監査人の設置していること(公益認定法5条)

 

①政令の基準に達している公益社団法人

・社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

②政令の基準に達していない公益社団法人

ⅰ社員総会+理事+理事会+監事

ⅱ社員総会+理事+理事会+監事+会計監査人

 

(3)一般財団法人

ⅰ評議員+評議員会+理事+理事会+監事+(会計監査人)

ⅱ評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人(*大規模財団法人の場合)

 

(4)公益財団法人

ⅰ評議員+評議員会+理事+理事会+監事+会計監査人(政令の定める基準に達している場合)

評議員+評議員会+理事+理事会+監事(+会計監査人)(政令の定める基準に達していない場合会計監査人の設置は任意)

 

2 事業

(1)一般社団法人・財団法人の事業

・非営利(利益を構成員で分配をしない)であれば、事業の目的は問わない。

・構成員の利益、団体の利益、公益目的等何でも良い

 

(2)公益社団法人・財団法人の事業

公益目的事業を行うことを主たる目的とする必要がある。

②特別な利益供与の禁止

・社員、評議員、理事、監事、使用人、株式会社等、特定の個人に利益を与えることはできない。(公益認定法5条)

③投機的な取引等の社会的信用を害する事業や風俗営業等の公序良俗に反する事業は行えない

 

3 社員

(1)社員の人数

・一般社団法人の設立には社員になろうとするものが「共同して定款を作成し」なければならない(法10条1項)とされているため、最低2名の社員が設立には必要です。

・社員が0人になったことが社団の解散事由ですから(法148条1項4号)1名しか社員がいなくても存続できる。

・公益認定を受ける社員の人数に制限はないため、1名でよい。

 

(2)社員の資格

①一般社団法人

・自然人であっても法人であってもよく、定款で社員の資格を定める(法11条1項5号)。

②公益社団法人

・公益目的に照らして不当な制限を設けることはできないとされている(公益認定法5条14号イ)

 

(3)社員資格の喪失

①任意退社

・いつでも自由に退社ができるが、退社時期等一定の制限を定款で定めることはできる。(法28条1項)

・やむを得ない場合は定款の定めにかかわらず、いつでも退社できる。

②法定退社

(ア)定款で定めた事由の発生 (イ)総社員の同意 (ウ)死亡または解散 (エ)除名

 

(4)議決権

①一般社団法人

・一人一議決権が原則だが、定款の定めにより議決権に差異を設けることを認めている。

②公益社団法人

・一人一議決権が原則だが、定款の定めにより議決権に差異を設けることを認めている。

・ただし、寄付金の多いものに多数の議決権を与えるような差別は認められない。

 

4 理事・監事・評議員

(1)公益法人の理事の特則(公益認定法5条)

①理事及びその配偶者または3親等内の親族である理事の合計数が理事の3分の1を超えてはならない。

②公益法人以外の他の同一の団体(株式会社など)の理事または使用人等が理事の3分の1を超えていはならない。

 

(2)一般社団法人・財団法人の理事・監事及び評議員の欠格事由

①法人

②成年被後見人、被保佐人

③一般法人法、会社法その他の倒産関連法の罪を犯して、刑の執行が終わって2年経過しないもの

④その他の罪で禁錮以上の刑の執行が終わっていない者

 

(3)公益社団法人・公益財団法人の理事・監事および評議員の欠格事由(公益認定法6条)

①公益認定が取消された日の1年前までの間に理事であって、取消の日から5年経過していない者

②公益認定法、一般法人法その他の法条に違反し、罰金の刑に処せられて、5年経過していない者

③禁錮以上の刑に処せられて、5年経過していない者

 

(4)報酬

・理事、監事の報酬は定款で定めるか、社員総会の決議で定める。(法89条、197条)

・評議員の報酬は定款で定める。(法196条)

・公益法人においては支給額の基準を定める。(公益認定法5条13号)

 

5 財産に関する規制

(1)株式等(公益認定法5条15号)

①公益法人は、株式、社員権、委託者又は受託者としての権利等が原則として保有を禁じられる。

②但し株式等の議決権が過半数とならない場合には保有が認められる。(公益認定法施行令7条)

 

(2)保有財産の使途

・公益法人では、公益目的事業財産とそれ以外の財産に区分され、公益目的事業財産は原則として、公益目的以外には使用できない。(公益認定法18条)

 

(3)公益目的取得財産残額の贈与(公益認定法5条17号)

・公益認定が取り消された公益法人は公益目的で取得した財産の残額を他の公益法人等に贈与する義務がある。

 

(4)残余財産の帰属先

①一般社団・財団法人(法239条)

・帰属先は定款で定めるか、定款に定めのない場合には、社員総会または評議員会で定める。

②公益法人(公益認定法5条18号)

・他の公益法人等に帰属する旨を定めなければならない。

 

6 情報開示

(1)一般社団・財団法人

・登記事項の公開の他に、貸借対照表の公告が必要(法128条1項)

 

(2)公益社団・財団法人

・登記事項の他に、貸借対照表の公告が必要なのは同じであるが、以下の情報を行政庁へ提出し、誰でも閲覧できるようにしなければならない。(公益認定法22条)

①事業計画書②収支予算書③資金調達及び設備投資の見込みを記載した書面④財産目録⑤役員等名簿⑥報酬支給基準⑦キャッシュ・フロー計算書⑧社員名簿⑨貸借対照表、損益計算書及び事業報告書並びに付属明細書

 

7 監督

①一般社団・財団法人

・監督官庁はない。

②公益社団・財団法人(公益認定法3条)

・原則として都道府県知事が監督し、2以上の都道府県に事務所を設置する場合などには内閣総理大臣が監督する。

 

8 法人税の優遇措置

(1)一般社団・財団法人

・収益事業収入及び会費収入にも課税される、全事業課税が原則である。

・「非営利性が徹底された法人」「共益活動を目的とする法人」の場合収益事業に対してのみ課税される。

 

(2)公益法人

・収益事業のみに課税され、公益目的事業の赤字に収益事業から補填も可能である。

・公益法人への寄付をした個人、法人は損金として計上できるため、寄付を集めやすいと言える。

 

公益認定申請と公益認定基準

1 公益認定の概要

・公益認定は以下の順序で行われる。

①公益認定申請

・公益認定を行う行政庁は、都道府県知事または内閣総理大臣である。

・申請書等は「公益法人インフォーメーション」で取得できる。

②意見聴取(公益認定法8条)

・許認可等が必要な場合にはその官庁、暴力団関係ではないかについては警察庁等、税金等の滞納処分の有無については国税庁長官等へ問い合わせる。

③公益認定委員会への諮問(公益認定法43条)

・独立した機関が判断を行う。

④認定(公益認定法5条、6条)

・5条の基準に達していたら、6条の欠格事由に該当しない限り認定される。

⑤公示

 

2 公益目的事業

(1)意義

・A「学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業」であって、B「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」という2つの条件を満たす必要がある。

 

(2)別表は以下で見てください

公益認定法2条別表

 

(3)不特定かつ多数の者の利益

・特定多数の者の利益の増進になっていないかどうかをチェックする基準である。

公益目的事業のチェックポイントについて

 

3 公益認定基準

・公益認定法5条は、18の公益認定基準を定めている。

・これらの基準を満たしていることを申請書および添付書面で説明する必要がある。

・これらの基準を満たさなくなったときには、公益認定が取り消される可能性がある。

*「公益認定等ガイドライン