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遺言執行者

遺言執行者とは

1 遺言事項

・遺言の内容で法的に効力を有するのは、民法で遺言事項として定められていることだけであり、遺言執行者も遺言事項以外は執行できないし、存在し得ない。

〈遺言事項〉

①遺贈

②遺産分割方法の指定

③相続分の指定

④特別受益の持戻しの免除

⑤相続人相互間の担保責任の指定

⑥遺留分減殺請求方法の指定

⑦推定相続人の排除・取消し(民法第893条、894条)

⑧一般財団法人の設立、財産の拠出

認知(民法第781条2項、戸籍法第64条)

⑩未成年後見人、未成年後見監督人の指定

③寄付行為・信託

④生命保険金の受取人の変更

⑬遺言執行者の指定

⑭遺言の取消

2 選任の必要性の有無

・遺言執行者は遺言の内容(遺言事項)を実現することが求められています。もっとも遺言執行者を遺言書が指定していない場合、必ずしも遺言執行者の選任を裁判所に申し立てる必要はなく、相続人が遺言内容を実現することも可能です。ただし、遺言執行者の選任が必要になるケースもあります。

 

(1)遺言執行者が必要な場合

①認知(民法第781条2項、戸籍法第64条)

 

②推定相続人の排除・取消し(民法第893条、894条)

・遺言書の内容として、認知や推定相続人の排除・取消しがなされていた時には、認知や排除の届出、排除の取り消しの届出などをするために、推定相続人の選任は必ず必要となります。

 

(2)遺言執行者の選任が任意である場合

・上記以外の遺言事項については原則として、遺言執行者の選任は任意であり、相続人全員によって行うことができる

 

3 遺言執行者の裁判所への選任申立てをしたほうが良い場合

①遺贈がなされていたが、相続人の中に、所有権移転手続き等に非協力的な者がいる場合

・受遺者の債権者や受遺者の不在者財産管理人等から遺言執行者の選任申立てを裁判所に対して行ったほうが良い場合もある

 

②財団法人設立、信託の設定等がなされているが、相続人の中に手続きに非協力的な者がいる場合

 

③相続人の数多かったり、相続人が遠方に居住しているなど、遺言書の実現のための書類作成や押印等に時間と手間がかかる場合には、相続人の代表として遺言執行者を選任すれば便利である。

 

遺言執行者の選任、就任、退任

1 遺言で遺言執行者が指定されている場合

(1)遺言者の死亡

(2)遺言執行者の就任の承諾

(3)遺言執行者就任の通知(相続人全員に通知する)

(4)遺言の内容実現のための手続き開始

・戸籍等の収集

・相続財産の調査

・登記手続き

・換価手続き

・金融機関の解約手続き等

(5)遺言内容の執行

(6)業務終了を全ての相続人に通知

(7)遺言執行者の退任

 

2 遺言執行者の選任を申し立てる場合

(1)申立人

・相続人、利害関係者(債権者、受遺者等)

(2)申立て先

・遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

(3)必要書類

・申立書

・死亡を証する戸籍

・候補者の戸籍及び住民票

・遺言書又は遺言検認調書謄本の写し

・利害関係を証する書面(戸籍等)

 

(4)費用

・収入印紙800円

・郵券