簡裁訴訟代理関係業務

簡裁訴訟の代理

(1)損害賠償請求

(2)建物明渡請求

(3)敷金返還請求

(4)貸金返還請求

(5)登記手続請求

(6)不当利得返還請求

(7)未払い賃料請求

 使用者が倒産手続きを行っていたり、事実上、倒産状態である場合は、未払賃金立替制度を利用できる。

*未払い賃金立て替え制度の概要

 

(8)サービス残業

*商業、映画・演劇業、保健衛生法、接客娯楽業の業種で常時10人未満の労働者を使用する事業では、特例で1週間に44時間まで労働させることができるため注意を要する。(労働施行規則25条の2)

 

*賃金の消滅時効は2年であり、各賃金支払期日から各々進行するため、受任後直ちに内容証明郵便等により時効中断の措置をとるべきである。

 

(9)消費者問題

 

ア.特定商取引法による解決

 クーリング・オフ 不実告知を理由とする取り消し 中途解約等

 

イ.割賦販売法による解決

 

ウ.消費者契約法による解決

消費者取消権及び不当条項無効

 

(10)交通事故(物損)

 

事故状況を証する書面として、実況見分調書や交通事故証明書を取得する。

損害額・・・車両時価より修理費用が高額の場合、車両の全損失として車両の時価額が損害額となる。

      中古車サイトなどで同種の車両の価格を調べて概算することも検討する。

 

過失割合・・・過失割合の基準は、判例の積み重ねでほぼ決まっているため、資料を読むこと。

*交通事故の過失割合

 

(11)離婚(家庭裁判所の事件は司法書士は代理できないが、提出書面の作成は可能)

 

ア.人事訴訟事件は調停前置主義であり、協議離婚が不成立の場合、訴訟の前に、家庭裁判所に調停の申立てが必要。

 

イ.調停成立の見込みがない場合、裁判所は調停に代わる審判をすることができるが、告知から2週間以内に当事者が異議を述べれば、その効力を失う。

 

ウ.調停不成立で離婚訴訟を提起した場合、法定離婚原因(民法770条)を立証する。

 

訴え提起前の和解(即決和解)

1 意義、特色

・通常1回の期日で「和解」が成立する簡便な手続

・和解の対象は、訴訟上の和解と同様

 

2 訴え提起前の和解の申立て

(1)口頭での申立が可能

(2)紛争要件の緩和

・将来の紛争を対象に和解が可能

(3)管轄

・常に相手方所在地の管轄簡易裁判所

・合意管轄は可能

(4)手数料 一件につき2000円

 

3 和解期日の実施

(1)当事者および代理人が出席する

(2)当事者から提示された和解条項案を事前に審査

・公序良俗違反、強行法規違反、脱法行為、不相当条項の排除など

(3)和解成立

・和解条項は債務名義となる

(4)和解不成立

・当事者双方の申立で訴訟に移行する(一方の申立では駄目)

 

支払督促

1 意義、特色

・金銭等の給付請求について債権者に債務名義を取得させる手続き

・簡易迅速処理に重点がある

 

2 手続の流れ

①債権者の支払督促申立

②裁判所の申立受理、審理、発付、送達→異議があれば訴訟に移行

③債権者の仮執行宣言申立て

④裁判所の申立受理、審理、仮執行宣言、送達→異議があれば訴訟移行

⑤仮執行宣言付支払督促確定

・債務名義が成立する

 

3 支払督促の申立

1)申立は債務者の普通裁判籍の所在地管轄簡易裁判所の書記官に宛てて申立て

(2)手数料

・訴額の半額

(3)留意点

・将来の給付請求は原則認められない(遅延損害金は可能)

・公示送達や外国送達はできない

 

少額訴訟

1 少額訴訟制度の趣旨

・少規模な紛争について、一般市民が訴額に見合った経済的負担で、迅速かつ効果的な解決を目指す手続として創設

・訴額が60万円以下の金銭請求事件が対象

2 少額訴訟の特色

(1)審理に関する特色

ア 一期日審理の原則

・一回の口頭弁論で審理を終えるのが原則(例外あり)

イ 一体型審理

・弁論と当事者尋問の一体化

ウ 反訴の禁止

エ 通常手続への移行

・申立人は被告

 

(2)証拠調べに関する特色

ア 証拠調べの即時性

・即時に取り調べることができる証拠に限る

イ 証人等の尋問

・証人等の宣誓不要

・裁判官主導の尋問

 

(3)司法委員の関与(和解)

(4)判決言渡しに関する特色

ア 即日言渡しの原則(原本でなくてもいい)

イ 分割払等の判決

・被告が任意に履行しやすくし、原告の強制執行の負担の軽減をしたもの

3 少額訴訟の判決に対する不服申立て

・控訴はできない

・異議の申立を同じ簡裁に行う

 

4 少額訴訟債権執行

・金銭債権のみ差し押さえることができる(預貯金など)

 

民事調停

1 民事調停手続の意義、特色

(1)当事者の互譲により、実情に即した条理にかなう解決をする

(2)特色

・柔軟で全体的な解決

・簡易、迅速、低廉、非公開の手続き

・合議制の調停委員会(裁判官と調停委員2人以上)による

・判決と同じ効力(債務名義となる)

 

2 民事調停手続の種類

ア 民事一般調停

イ 特定調停

ウ 宅地建物調停

エ 農事調停

オ 商事調停 

カ 交通調停

キ 公害等調停

 

3 民事調停の申立

(1)書面申請による

・賃料の増減請求の場合調停前置主義が取られている

・申立に付随する申立ができる①調停前の措置(現状変更禁止等)②民事執行手続の停止等

(2)申立手数料 訴額の半額

・個人の特定調停の申立は債権者ごとに一律500円

(3)管轄  相手方の住所地の管轄簡易裁判所(原則)

・合意管轄、特別管轄あり

 

4 調停の実施

(1)本人出頭主義(常に本人が出頭しなければならない)

(2)調停の場所 調停室、現地調停

(3)事案の解明

・職権による事実の調査と証拠調べ

・調停案を調停委員会が提出

(4)調停の終了

・調書の記載は裁判上の和解と同一の効力

・調停に代わる決定がされることもある(職権)

 

5 特定調停

(1)債務者と債権者等との間で、返済条件の軽減化などを裁判所が仲介する手続き

(2)個人や法人の経済的再生または再建手続の一種として位置づけらることもある

(3)①債務額減額 ②将来利息の放棄 ③分割弁済

 

民事保全事件

1 民事保全手続の意義、特色

(1)意義

・将来の強制執行の確保

・暫定的に一定の権能や地位を認める手続

(2)特色

・迅速性・緊急性・、密航性、暫定性・仮定性、付随性

 

2 民事保全手続の種類

(1)仮差押

・不動産仮差押 ・債権仮差押 ・動産仮差押

(2)仮処分

・係争物に関する仮処分

・仮の地位を定める仮処分

 

3 民事保全命令の申立て(本案の裁判所への申立)

(1)申立書の提出、疎明資料の添付

(記載事項)

①請求債権の表示又は仮処分により保全すべき権利の表示

②申立ての趣旨

③申立ての理由

・保全の必要性等

④証拠の記載

・即時取り調べができるもの

(2)手数料

・当事者一人につき一律2000円

 

4 審理と裁判

(1)審理

・書面審査が原則だが、仮の地位を定める仮処分では必要的に審尋が行われる

・任意的口頭弁論(疎明と即時に取調可能な証拠)

 

(2)裁判

・担保決定がなされる(担保額、方法、期間)

・仮処分解放金の額が決定される(被保全権利が金銭請求権の場合)

・申立却下処分には即時抗告が可能

 

5 留意事項

1)保全の必要性について

①請求債権に担保権がついている場合は必要性が認められない

・不動産の剰余価値を疎明する(先順位の担保権がある)

②連帯保証人に対する仮差押

・主債務者が無資力であることを疎明

③給与債権、取引のための預金債権、企業の販売商品

・債務者に与える影響が大きいため、不動産等への差押を優先するべき

④自動車引き渡しの仮処分

・自動車評価額<残存債権額の場合に認められる

 

(2)担保額

①目的物の価格が原則(不動産評価証明書)

②抵当権付き不動産の場合

・抵当権の債権額の控除

③建物の敷地の場合

・借地権付負担控除

④借地上の建物の場合

・敷地利用権加算